最終更新日:2026年8月1日
この記事の対象
- 本記事は、これから海外移住を考え始めた方向けに「何から準備すればいいか」という最初の一歩に絞って解説しています。
- 手続き全体をより詳しく網羅的に知りたい場合は、海外渡航の総合ガイドもあわせてご覧ください。
- 会社都合の海外赴任で渡航される方は、海外赴任・海外移住ガイドで赴任特有の注意点をまとめています。
ペットと海外移住、まず何から始めればいい?
海外移住の準備は、大きく分けて6つのステップで進みます(本記事は犬・猫を対象としています。それ以外の動物種は手続きが異なるため渡航先当局にご確認ください)。国や地域によって細かい要件は異なりますが、そのなかで犬・猫を連れて日本を出国する場合、日本出国前の動物検疫(輸出検疫証明書の取得)はどの渡航先へ行く場合でも共通して必要です。マイクロチップの装着やワクチン接種は多くの渡航先で入国条件として求められますが、要否や条件は渡航先によって異なるため、渡航先ごとの確認が欠かせません。まずは全体像を押さえ、そのあとで渡航先ごとの個別要件を確認していく順番がおすすめです。
マイクロチップの装着
- ISO規格(11784・11785)のマイクロチップを動物病院で装着します
- 多くの国で、狂犬病ワクチンより先に装着することが条件とされています
ワクチン接種・健康診断
- 狂犬病ワクチンを含む必要な予防接種を行います
- 渡航先によっては混合ワクチンの接種証明や抗体価検査が求められます
日本出国前の動物検疫(輸出検疫証明書)
- 動物検疫所で検査を受け、輸出検疫証明書の交付を受けます
- 申請・検査の期限が決まっているため、早めのスケジュール管理が重要です
渡航先ごとの入国手続き・書類準備
- 輸入許可、健康証明書など、渡航先が求める書類を整えます
- 国によって要件がまったく異なるため、個別の確認が欠かせません
航空会社への連絡・輸送手配
- 機内持ち込みか貨物室輸送かを決め、予約します
- 航空会社によって受付条件・受託可否が異なるため事前確認が必要です
渡航後の現地登録・保険・獣医探し
- 現地でのライセンス登録(犬の場合が多い)やペット保険加入を検討します
- かかりつけ獣医を探し、新生活に備えます
準備はいつから始めればいい?
渡航先が決まったら、できるだけ早く着手するのが安全です。渡航先によって必要な手続きの重さが大きく異なるためです。マイクロチップとワクチンだけで足りる渡航先もあれば、抗体価検査とその後の待機期間が必要な渡航先もあり、後者は前者よりもまとまった準備期間を要します。
「自分の渡航先にどの手続きが必要か」がわからない段階では、具体的な月数から逆算するよりも、まず動物検疫所や渡航先当局の公式情報、あるいはPetAirJPNのような専門窓口に相談し、必要な手続きの種類を洗い出すことから始めるのが確実です。抗体価検査が関わる渡航先の準備手順は、狂犬病抗体価検査の手順ガイドで詳しく解説しています。
マイクロチップとワクチン、なぜ順番が重要?
海外移住の準備で最初につまずきやすいのが、マイクロチップとワクチンの順番です。EU諸国やタイをはじめ多くの国では、マイクロチップを装着したあとに狂犬病ワクチンを接種することが入国要件の前提になっています(EUの要件例は欧州委員会公式ページ参照、2026年7月確認)。順番を逆にしてしまうと、ワクチン接種そのものが要件を満たさないとみなされ、再接種が必要になることがあります。
マイクロチップは獣医師のもとで装着し、装着後は番号入りの証明書(英文)を必ず受け取っておきましょう。狂犬病ワクチンについては、多くの国が入国要件として接種証明を求めていますが、接種可能な月齢や証明書の有効期間は渡航先によって異なります。
渡航先によっては、狂犬病ワクチンに加えて混合ワクチン(犬のジステンパー・パルボウイルスなど、猫の汎白血球減少症など)の接種証明を求めるところもあります。ワクチンの種類ごとの役割や標準的な接種スケジュールは、ペットとの海外渡航に必要なワクチン完全ガイドで比較しています。マイクロチップと狂犬病ワクチンの基礎知識は、それぞれ以下の記事でさらに詳しく解説しています。
日本出国前の動物検疫は何をすればいい?
犬・猫を海外へ連れて行く場合、日本の動物検疫所で検査を受け、輸出検疫証明書の交付を受ける必要があります。この証明書がないと、渡航先での入国時に書類不備とみなされるリスクが高くなります。
動物検疫所の公式情報によると、検査希望日の14日前までにNACCS(動物検疫関連業務)を利用して輸出検査を申請し、出発10日以内に実際の検査を受ける流れになります(出典: 動物検疫所「犬、猫を輸出するには」、2026年7月確認)。「申請」と「検査の実施」は別のタイミングなので、この2段階を混同しないよう注意してください。
検査当日は、狂犬病(犬の場合はレプトスピラ症も)に関する検査を受け、問題がなければ英文の輸出検疫証明書が交付されます。書類は複数部発行してもらえる場合が多いため、渡航先での提出用と、将来の日本再入国に備えた保管用とで分けておくと安心です。
書類は英文で用意する
渡航先の入国審査では、日本語の書類がそのまま通用しないことがほとんどです。ワクチン接種証明書や健康診断書は、あらかじめ英文(渡航先によっては現地言語)で発行してもらえるよう、動物病院に早めに相談しておきましょう。獣医師の署名・押印が求められる書類も多いため、様式に不備があると受理されないことがあります。渡航先が求める言語・様式を事前に確認し、動物病院にも共有しておくと、当日の手戻りを防げます。
渡航先によって何が変わる?タイ・EU・アメリカの例
ここからは、代表的な渡航先としてタイ・EU諸国・アメリカを例に、押さえておきたいポイントを整理します。要件は随時見直されるため、必ず各国公式情報でも最新の内容をご確認ください。
タイ
- タイ農務省(DLD)への輸入許可(Import Permit)申請が必要です。出発の7日以上60日以内に申請し、発行後60日間有効とされています(出典: 在ワシントンD.C.タイ王国大使館公式情報、2026年7月確認)
- 必要なワクチンは犬が狂犬病・ジステンパー・肝炎・パルボウイルス・レプトスピラ症、猫が狂犬病・汎白血球減少症で、初回接種の場合は接種後21日間の待機期間が求められます。有効期限内に継続して追加接種(ブースター)している場合はこの待機は不要とされています
- 到着後は空港の動物検疫窓口で許可書等を提示し、1頭あたり500バーツの手数料を支払います。書類・ワクチンが揃っていれば隔離は原則不要ですが、書類不備や健康上の懸念がある場合、DLDには最長30日間の隔離を命じる権限があります
EU諸国
- 2026年4月22日から、犬・猫・フェレットの非商業目的の渡航(飼い主同伴など)を対象に新しいEUペット渡航規則が適用されています。日本を含む非EU居住者がこの条件でペットを連れて渡航する場合、EU域内在住者向けのペットパスポートは使えず、渡航のたびに動物衛生証明書(Animal Health Certificate)が必要です。商業目的の輸送など対象条件に当てはまらない場合は別の要件が適用されるため、渡航形態に応じて欧州委員会の公式情報でご確認ください
- 証明書の有効期間は発行日から10日間で、この間にEU国境を通過する必要があります(出典: 欧州委員会公式情報、2026年7月確認)
- マイクロチップ装着後に狂犬病ワクチンを接種し、初回接種の場合は接種完了から21日間の待機が必要です。有効期限内に継続して追加接種している場合はこの待機は不要とされています
- 狂犬病抗体価検査が必要かどうかは出発国によって扱いが分かれます。日本からの渡航での要否は欧州委員会公式ページの最新の掲載状況で必ずご確認ください
イギリス
- Brexit後のイギリスはEUのペット渡航制度上「第三国」にあたり、EUとは別の手続きが適用されます。「EU諸国」の一つとして同じルールを当てはめないよう注意してください
- 犬は入国24〜120時間前の条虫(エキノコックス)駆虫治療が必要です(出典: GOV.UK公式情報、2026年7月確認。対象動物は犬)
- アイルランド・マルタ・フィンランドなどから直接入国する場合は、この駆虫治療の対象外とされています
アメリカ
- 2024年8月の改正以降、アメリカに入国・帰国するすべての犬に、マイクロチップの装着(規格の詳細はCDC公式ページでご確認ください)と、CDC Dog Import Formのオンライン提出済み受領証が必須になっています(出典: CDC公式プレスリリース、2026年7月確認)
- あわせて到着時に健康であること、生後6か月以上であることも要件です。狂犬病ワクチンを接種する場合は、マイクロチップ装着後に行うこととされています
- 日本は現在もCDCの「狂犬病高リスク国」リストには含まれていません。渡航前の過去6か月間、狂犬病高リスク国に滞在歴がない犬に限り、上記の必須項目に加えての狂犬病ワクチン証明などの追加提出は不要とされていますが、高リスク国に滞在歴がある場合は狂犬病ワクチン証明などの追加書類が必要になります。ワクチン接種の要否を含め、渡航前に必ずCDC公式情報でご確認ください(出典: CDC公式情報、2026年7月確認)
- 州・自治体によっては、到着後一定期間内の犬ライセンス登録を義務付けている場合があります。期限は自治体ごとに異なるため、渡航先の公式情報でご確認ください
- ハワイ・グアムは連邦レベルの要件に加えて、それぞれ別の当局が独自の検疫制度を設けています。ハワイとグアムは所管が異なるため、片方の要件をもう一方に流用しないよう注意してください
| 国・地域 | マイクロチップ | 狂犬病ワクチン | 抗体価検査 | 入国時の主な手続き |
|---|---|---|---|---|
| タイ | 必須 | 必須 | 要件なし(書類不備時は隔離の可能性) | 輸入許可の提示、空港での手数料支払い |
| EU諸国 | 必須(ワクチンより先) | 必須(初回は21日待機) | 出発国により異なる(要確認) | 動物衛生証明書(AHC)の提示 |
| イギリス | 必須 | 必須 | EUとは別に要確認 | 入国に必要な証明書の提示、犬は条虫駆虫証明の提示(詳細はGOV.UK公式サイトでご確認ください) |
| アメリカ | 必須(犬・2024年8月〜) | 必須ではない(直近6か月に高リスク国滞在歴がなければ追加提出不要) | 出発国により異なる | CDC Dog Import Formの受領証提示 |
※上記は代表的な傾向をまとめたものです。国・地域ごとの詳しい要件と一次情報リンクは、各国当局の公式ページで必ず最新情報をご確認ください。ハワイ・グアムなど独自の検疫制度がある地域は表に含めていません。(出典: 動物検疫所、在ワシントンD.C.タイ王国大使館、欧州委員会、GOV.UK、CDCの各公式情報。確認日 2026年7月)
航空輸送はどう選べばいい?機内持ち込みと貨物室
航空輸送の方法は、大きく「機内持ち込み(客室同伴)」と「貨物室輸送」の2つに分かれます。小型犬・猫はキャリーバッグが座席下に収まることを条件に機内持ち込みが認められる場合が多く、中型〜大型犬や短頭種は貨物室輸送が基本になります。予約枠・受付条件・追加料金は航空会社ごとに異なるため、早めの確認が欠かせません。
どちらの方法でも、ペットがキャリーやクレートに慣れていないと大きなストレスになります。出発の数週間前からクレートを部屋に置いて自由に出入りさせ、おやつなどで少しずつ慣らしておくと安心です。当日は出発前に運動と排泄を済ませ、満腹による嘔吐を避けるため搭乗の数時間前には食事を終えておくことをおすすめします。輸送方法の選び方や費用の考え方は、ペットの航空輸送完全ガイドで詳しく比較しています。
貨物室輸送では、国際航空運送協会(IATA)の基準に沿ったクレートの使用を求める航空会社が多く見られます。クレートのサイズやつくりが基準を満たしていないと搭乗を断られることもあるため、購入前に利用予定の航空会社の規定を確認しておきましょう。また、短頭種は気道の構造上、暑さや興奮によるストレスの影響を受けやすいとされており、季節や時間帯によって受け入れを制限する航空会社もあります。短頭種の渡航を検討している場合は、事前に航空会社ごとの受託条件をよく確認してください。
乗り継ぎ・経由地がある場合の注意点
直行便がなく経由便を利用する場合は、最終目的地だけでなく経由国の要件も確認が必要です。国によっては、乗り継ぎで一時的に入国したとみなされ、経由国の検疫手続きが発生することがあります。経由地の空港でペットを機内に留め置ける便かどうかも航空会社によって異なるため、予約前に確認しておくと当日のトラブルを避けやすくなります。
到着後は何をすればいい?現地登録・保険・獣医探し
渡航先に到着したあとも、いくつか対応しておきたいことがあります。多くの国・地域では、犬の場合に自治体や州へのライセンス登録を求めており、到着後一定期間内に手続きしないと罰則が科される地域もあります。登録の要否や期限は現地の自治体・当局によって異なるため、渡航先の公式情報でご確認ください。
動物医療費の水準は国によって大きく異なり、日本より高額になりやすい国もあります。想定外の出費に備えて、ペット保険への加入を検討しておくと安心です。あわせて、現地で信頼できる獣医を早めに見つけておくと、体調不良時にもすぐに相談できます。
住環境への適応にも時間がかかることがあります。到着直後は行動範囲を広げすぎず、安心できる狭いスペースから慣らしていく、日本から持参した毛布やおもちゃで匂いを感じさせる、フードや水は少しずつ現地のものに切り替えるといった配慮が、ペットの負担を減らす助けになります。特に短頭種や高齢のペットは気温差や気圧の変化に敏感な場合があるため、移動の季節や時間帯にも気を配りましょう。
引っ越し先の住居がペット可であることも大前提です。物件によっては頭数制限や体重制限、追加のデポジットが求められる場合があるため、住まい探しの段階でペットの条件を伝えておくとスムーズです。長時間のフライトを経たあとは、数日かけて体調や食欲に変化がないかを観察し、気になる様子があれば早めに現地の獣医師に相談してください。
準備でよくある失敗と対策は?
待機期間や証明書の様式は国ごとに異なります。友人の渡航体験談や別の国の情報をそのまま参考にすると、実際の渡航先の要件を満たせていないことがあります。
対策:渡航先が決まったら、その国の公式情報を個別に確認する。
ワクチンを先に接種してしまうと、渡航先によっては接種自体が要件を満たさないとみなされ、再接種が必要になる場合があります。
対策:マイクロチップが未装着なら、ワクチン接種より前に必ず装着を済ませる。
EUの渡航規則のように、検疫・入国要件は改正されることがあります。数年前の情報や体験談を鵜呑みにすると、必要な書類が揃わないまま渡航当日を迎えるリスクがあります。
対策:渡航が近づいたタイミングで、必ず最新の公式情報を再確認する。
短頭種や大型犬は、航空会社によって受託条件が異なり、季節によって受け入れを制限する場合もあります。出発直前に確認して予約が取れないケースも起こり得ます。
対策:渡航先の要件を確認する段階で、あわせて航空会社にも早めに問い合わせる。
PetAirJPNができるサポート
ここまで見てきたように、海外移住に伴うペットの渡航準備は、確認すべき項目が多く、国によって条件も大きく異なります。PetAirJPNは、「ペットの国境をなくす」というビジョンのもと、渡航準備の負担を軽くするお手伝いをしています。
サポートできること(例)
- 渡航先の検疫・入国要件に応じた準備スケジュールのご案内
- 必要書類の整理と、取得先・準備の進め方のご案内
- 官公署への申請が必要な場合は、行政書士と連携しての対応(申請業務は行政書士が担当します)
- 航空会社への輸送手配の調整、クレート選びのご相談
- 渡航先ごとの検疫対応についてのご案内
「英語でのやり取りに不安がある」「大型犬や短頭種で心配」という方は、早めにご相談いただくことで、準備の抜け漏れを減らせます。まずは渡航先と出発予定時期をお聞かせください。
よくある質問(FAQ)
まとめ:まずは6ステップの全体像から
ペットとの海外移住は確認すべきことが多く、不安に感じるのも当然です。ですが、マイクロチップ装着→ワクチン接種→日本出国前の動物検疫→渡航先の入国書類準備→航空輸送手配→現地での登録という6つのステップに分けて考えれば、次に何をすべきかが見えてきます。渡航先が決まったら、まずはその国の公式情報を確認し、必要な手続きの種類を洗い出すことから始めましょう。
手続き全体をさらに詳しく知りたい方は海外渡航の総合ガイド、日本帰国時の手続きは日本帰国の完全ガイド、抗体価検査の具体的な手順は狂犬病抗体価検査の手順ガイドもあわせてご覧ください。
執筆: PetAirJPN 編集部(国際ペット輸送の実務チーム)
※この記事の情報は2026年8月時点のものです。各国の検疫規制・航空会社のポリシーは予告なく変更されることがあります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の渡航可否・要件の確定判断は、各国当局・動物検疫所・かかりつけ獣医師の最新の公式情報を必ずご確認ください。
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