最終更新日:2026年7月29日
この記事でわかること
- イギリス入国に必要なマイクロチップ・狂犬病ワクチン・駆虫処置の基本ルール
- 日本の動物検疫所で行う輸出手続きのスケジュール
- 直行便(貨物輸送)とフランス経由(ユーロトンネル利用)、2つのルートの違い
- 危険犬種(Banned dogs)の考え方と注意点
- イギリス到着後に必要なマイクロチップの再登録や住まい探しのポイント
- 準備の過程でよくある失敗と対策
イギリスへのペット渡航が厳しいと言われる理由は?
イギリスは狂犬病の発生がほとんどない国とされており、他国から犬や猫を連れて入国する際のルールが厳格です。マイクロチップの装着と狂犬病ワクチンの接種は順序まで決められており、犬の場合はエキノコックス(条虫)の駆除処置も必須です。加えて、航空面でも補助犬以外の一般的なペットは客室に同伴できないケースが多く、貨物室での輸送が基本になります。取り扱いは航空会社や運航ルートによって異なるため、詳細は各社の公式情報やGOV.UK公式ページでご確認ください。
一方で、フランスなど他のEU加盟国にまず渡航し、そこからユーロトンネル(LeShuttle)で英国本土へ陸路移動する方法を使うと、小型のペットであれば客室同伴が認められる航空会社もあり、ペットの負担を軽減できる可能性があります。この記事では、直行便による貨物輸送とフランス経由ルートを比較しながら、イギリス入国の条件・手続き、そして現地でのペット生活のポイントを解説します。
イギリス入国に必要な基本ルールは?
イギリス入国には、マイクロチップ装着→狂犬病ワクチン接種という順序の徹底、犬の駆虫処置、そして日本側の動物検疫所での輸出手続きが必要です。以下でそれぞれの要件と期限を順に解説します。
マイクロチップ装着と狂犬病ワクチンの順序
イギリスでは、マイクロチップをペットに装着し、その後に狂犬病ワクチンを接種するという順序を守る必要があります(出典: GOV.UK「Bring your pet to Great Britain」、2026年7月確認)。同じ日にまとめて処置しても、マイクロチップの装着が先であれば順序の要件は満たされます。逆にワクチンを先に接種してしまうと要件を満たさない扱いになるため注意してください。マイクロチップの規格や読み取り機対応など細かい条件は個体やワクチンの状況によって異なる場合があるため、装着前にGOV.UK公式ページや動物病院で最新の要件をご確認ください。
初めて狂犬病ワクチンを接種する場合は、接種後21日以上の経過が必要です。以前は一律「21日以上」という基準でしたが、2025年12月以降はワクチンの添付文書に記載された効果発現までの期間に応じて、必要な待機日数がワクチンごとに異なる場合があるとされています。また、ワクチンの有効期間内に継続して追加接種(ブースター)をしている場合は、待機期間の扱いが初回接種時と異なることがあります。ご自身のペットがどちらに当てはまるかは、動物病院やGOV.UK公式ページで最新の考え方を必ずご確認ください。
日本はイギリスから見て「listed country」に分類されており、渡航にあたって狂犬病の抗体価検査は求められていません。ただし対象国の分類は見直される可能性があるため、出発前にGOV.UK「Listed and unlisted countries」で最新の分類をご確認ください。
犬のエキノコックス(条虫)駆除
犬の場合、イギリス到着前24時間以降・120時間(5日)以内に条虫駆除薬を投与し、その記録を獣医師が証明書に残す必要があります(出典: GOV.UK「Bring your pet to Great Britain」、2026年7月確認)。この要件は犬のみが対象で、猫には適用されません。投与のタイミングがずれると要件を満たさなくなるため、フライトスケジュールが決まり次第、動物病院と投与日を調整しておくと安心です。
日本の動物検疫所での輸出手続き
出発前には、日本の動物検疫所で輸出検査を受ける必要があります。検査希望日の14日前までにNACCS(動物検疫関連業務)を利用して輸出検査を申請し、出発10日以内に検査を受けます(出典: 動物検疫所「犬、猫を輸出するには」、2026年7月確認)。検査後には、イギリス側が求めるGB Pet Health Certificate(イギリス政府様式の動物衛生証明書)が交付されます(出典: GOV.UK「Great Britain pet health certificate」、2026年7月確認)。「申請は10日前まで」と混同しやすい部分ですが、申請と検査実施は別の期限として覚えておくと安心です。
このGB Pet Health Certificateは、発行から10日以内にイギリスへ入国しないと無効になります(出典: GOV.UK「Great Britain pet health certificate」、2026年7月確認)。航空券や陸路移動のスケジュールを、証明書の有効期間に合わせて逆算しておきましょう。
危険犬種(Banned dogs)に関する注意
イギリスには「Dangerous Dogs Act」に基づく危険犬種の規制があり、対象となる犬は原則として持ち込みが認められていません。GOV.UK公式ページは、対象になるかどうかは犬種名ではなく見た目の特徴(タイプ)で判定されると明記しており、交雑犬であっても外見が該当すれば対象になり得ます(出典: GOV.UK「Banned dogs」、2026年7月確認)。有効なCertificate of Exemption(適用除外証明)を保有している場合など、個別の状況によって扱いが異なることもあります。対象タイプに該当する可能性がある場合は、犬種名や数を自己判断せず、渡航前に必ずGOV.UK公式ページでご自身のケースに当てはまる最新の情報を確認してください。
また、要件を満たさない場合は最長4か月の検疫(quarantine)が課されることがあります(出典: GOV.UK「Bring your pet to Great Britain」、2026年7月確認)。マイクロチップ・狂犬病ワクチン・駆虫処置・証明書の有効期間など、すべての要件を出発前に漏れなくクリアしているか確認しましょう。
イギリス入国の基本要件まとめ
- マイクロチップ装着を先に行う(同日でも順序が先であればOK)
- その後に狂犬病ワクチンを接種(初回接種は21日以上の経過が必要。追加接種の場合や使用ワクチンにより異なる場合あり)
- 犬はエキノコックス駆除薬の投与(到着前24〜120時間以内)と獣医師による記録
- 日本の動物検疫所で輸出検査を申請(検査希望日の14日前まで)・受検(出発10日以内)
- 証明書発行から10日以内にイギリスへ入国
- 危険犬種に該当する外見的特徴がないか確認(犬種名でなく見た目で判定。適用除外証明があれば扱いが異なる場合も)
直行便での貨物輸送はどのような流れ?
直行便では、航空会社(貨物部門)への予約、動物検疫所発行の証明書を携えた出発空港での手続き、到着地の動物検疫施設での書類・マイクロチップ照合という流れで進みます。多くの航空会社で、一般ペットの輸送は貨物室が基本です。
なぜ客室同伴ができないのか
イギリスへの直行便では、多くの航空会社が補助犬以外のペットの客室同伴を認めておらず、一般ペットは貨物室での輸送が基本になります。補助犬とは盲導犬・聴導犬・介助犬など、障害のある方をサポートする犬を指し、一般のペットとは区別されています。こうした取り扱いの違いが、直行便を選ぶ飼い主とペット双方の負担が大きくなる主な要因です。取り扱いの詳細は利用する航空会社の公式サイトやGOV.UK公式ページでご確認ください。
貨物輸送の一般的な流れ
航空会社(貨物部門)への予約
ペットの種類・サイズ・ケージ重量を申告し、搭乗予定便との連携を確認します。
出発日の空港での手続き
動物検疫所発行の輸出証明書を持参し、貨物地区でペットを預けます。Air Waybill(貨物運送状)が発行されます。
到着地の動物検疫施設へ
飼い主は人用の入国手続きを済ませたあと、動物検疫施設で書類とマイクロチップの照合を受け、手数料を支払います。問題がなければペットを引き取れますが、書類確認・照合の手続きには一定の時間がかかります。
直行便貨物輸送のメリット・デメリット
メリット
- 直行便のためフライト時間が短く、経由地での乗り継ぎの手間が少ない
- 必要書類がイギリス要件のみで、比較的シンプル
デメリット
- 大型犬や長毛種ほど貨物運賃が高くなりやすい(金額は航空会社にお問い合わせください)
- 貨物室環境で長時間過ごすことになり、ペットへのストレスが大きい
- 到着後の書類確認・照合の手続きに一定の時間がかかる
直行便貨物輸送の特徴
- フライト時間が短い
- 書類手続きがイギリス要件のみで比較的シンプル
- 貨物室で過ごす時間が長く、ペットへの負担が大きくなりやすい
- 大型犬・長毛種は運賃が高くなる傾向がある
- 到着後の引き取りに一定の時間がかかる
フランス経由ユーロトンネル利用はどう違う?
フランス経由では、小型ペットの機内同伴を認める航空会社があり、ユーロトンネル(LeShuttle)を使えば車ごとイギリスへ渡れるため、貨物室への預け入れを避けられる場合があります。ただしEUとイギリス双方の入国要件に対応する手間が増えます。
フランス入国では機内同伴が可能になる場合も
フランスなど他のEU加盟国へ向かう便では、小型犬や猫であれば機内キャビンへの持ち込みを認める航空会社もあります。条件(体重・ケージサイズなど)は航空会社によって異なるため、利用予定の航空会社の公式サイトで最新の条件を必ずご確認ください。
大型のペットは受託手荷物として貨物室に乗せる場合がありますが、イギリスのように一律で「貨物扱いのみ」と定める国・航空会社ばかりではなく、受託手荷物として預けられるケースもあります。取り扱いは国や航空会社によって異なるため、イギリス直行便に比べてペットへの負担が軽減されやすい傾向はあるものの、必ず利用予定の航空会社の公式サイトでご確認ください。
ユーロトンネル(LeShuttle)でイギリスへ
フランスからイギリスへ渡る際は、フェリーかユーロトンネル(LeShuttle。旧ブランド名Eurotunnel)のどちらかを選べます。ユーロトンネルは海底鉄道を車両ごと乗り込むシステムで、約35分でドーバー海峡を横断します(出典: LeShuttle公式サイト、2026年7月確認)。
レンタカーやペット同伴が可能な移動手段を利用すれば、ペットは車内で飼い主と一緒にいられるため、二度目の貨物室預けが不要になるのが大きな魅力です。
二重手続きになりやすい点に注意
フランス経由ルートは、EU(フランス)入国要件とイギリス入国要件(Pet Travel Scheme)の両方に対応する必要があります。狂犬病ワクチンやマイクロチップの基本要件は共通する部分が多いものの、フランス到着時にはEU向けの健康証明書が必要になる場合があり、犬のエキノコックス駆除処置についても、イギリス入国時のタイミング要件を改めて確認される場合があります。日本出発前に、動物検疫所で英国用・EU用それぞれの書式を作成してもらっておくとスムーズです。
フランス経由ルートのポイント
- 小型のペットは機内持ち込みを認める航空会社がある(条件は各社で確認)
- フランスとイギリス、両国の入国要件に対応する必要がある
- ユーロトンネルではペットと同じ車内で移動できる
- 書類手続きは複雑になりやすいが、ペットの負担は軽減できる場合がある
直行便とフランス経由、どちらを選ぶべき?
どちらのルートにも一長一短があります。ペットの体格・体質、予算、スケジュールの余裕によって適したルートは変わるため、下表を目安として比較してください。
| 項目 | イギリス直行便(貨物輸送) | フランス経由(機内同伴/受託手荷物+ユーロトンネル) |
|---|---|---|
| 輸送形態 | 原則貨物室での輸送。客室同伴は不可 | 小型犬猫は機内同伴が可能な場合あり。大型は受託手荷物になりやすい |
| 費用の傾向 | 大型犬ほど貨物運賃が高くなりやすい(金額は航空会社にご確認ください) | 航空券・ユーロトンネル・現地移動の費用がかかるが、大型犬の貨物輸送より抑えられる場合がある |
| ペットの負担 | 貨物室で長時間過ごすため、負担が大きくなりやすい | 飼い主と同じ移動手段で移動できるため、ストレスを軽減しやすい |
| 手続きの手間 | イギリス入国要件のみで完結 | EU(フランス)とイギリスの二重の書類管理が必要 |
| 到着後の流れ | 動物検疫施設での書類確認・照合に一定の時間がかかる | フランス側でのチェック後、ユーロトンネルを経てそのまま車で移動可能 |
出典: GOV.UK「Bring your pet to Great Britain」/LeShuttle公式サイト(2026年7月確認)
イギリスでのペット事情:ライセンス・住宅・保険は?
渡航後は、現地データベースへのマイクロチップ再登録、ペット可物件探し、獣医療費に備えたペット保険への加入など、イギリスでの生活基盤を整える必要があります。以下で順に見ていきます。
マイクロチップ登録と首輪タグ
イギリス(イングランド・ウェールズ・スコットランド)では犬のマイクロチップ装着が法律で義務付けられています。猫については、イングランドで2024年6月からマイクロチップ装着が義務化されました。ウェールズ・スコットランドでは、本記事で確認できた範囲では猫の装着義務化は確認されていません(犬の義務化とは異なる扱いです)。日本でマイクロチップを装着していても、英国公認のデータベースに飼い主情報を登録し直さないと要件を満たさない可能性があるため、到着後は早めに手続きしてください。
また、公共の場所で犬を散歩させる際は、首輪に飼い主情報を記載したIDタグの装着が求められます。マイクロチップの再登録や首輪の要件など、現地生活の細かいルールはGOV.UK公式ページや現地の自治体情報で確認しておくと安心です。
ペット可物件は少なめだが改善傾向
賃貸住宅では「No Pets」とするオーナーがまだ多く、ペット可物件は限られる印象です。とはいえ近年はモデル賃貸契約の改定で「ペットを無条件に拒否してはならない」という方向に動いており、以前よりは探しやすくなりつつあります。大手ポータルサイトの「Pets allowed」フィルターを使うのが定番ですが、物件探しには一定の時間がかかることも珍しくありません。長毛犬や大型犬の場合、大家さんから追加デポジットやペット保険の提示を求められることもあるため、事前の交渉が必要です。
獣医の医療費とペット保険
イギリスは民間獣医が主流で、ペット向けの公的な医療保険制度はありません(この点は日本も同様です)。そのため手術や長期治療では相応の費用が発生することがあり、ペット保険に加入する飼い主が少なくありません。保険料や補償範囲は保険会社・プラン・ペットの年齢や持病の有無によって大きく変わるため、加入前に複数社を比較検討することをおすすめします。到着後は近隣の動物病院を早めに探し、健康診断やワクチンの更新計画を立てておくと安心です。
公共交通機関とペット
イギリスの鉄道やバスでは、ケージに入れていればペット同伴を認めている路線もあります。ただし公共の場では基本的にリード着用が推奨され、フンの処理は当然の義務です。カフェやパブでも犬連れ可の場所が増えており、街中でもペットとの外出がしやすい傾向にありますが、大型犬や吠えやすいペットの場合は周囲への配慮としつけが欠かせません。
イギリスでペットと暮らす際のポイント
- マイクロチップは現地データベースへの再登録が必要
- 犬の首輪には飼い主情報のIDタグの装着が求められる
- 住居探しは「Pets allowed」フィルターを活用する
- ペット保険への加入を検討し、補償内容は複数社で比較する
- 公共の場ではリード着用とマナーを守る
準備でよくある失敗・注意点は?
準備段階では、マイクロチップとワクチンの接種順序の取り違えや、日本側の申請・検査期限の混同、証明書の有効期間の見落としなどが典型的な失敗として挙げられます。以下によくあるパターンをまとめました。
ここに挙げた要件は変更されることがあります。準備を始める前にGOV.UK公式ページと動物検疫所公式サイトで最新情報をご確認ください。
PetAirにできることは?
PetAirは、イギリスへの渡航にあたって、書類準備の進め方のご案内や動物検疫対応に関する情報整理を行っています。また、直行便での貨物輸送、フランス経由での機内同伴・受託手荷物ルートなど、状況に応じた航空便・貨物代理店との連携調整や、通関対応のご案内、空港での引き渡しまで、渡航に関わる一連のサポートを行っています。渡航先・出発予定時期・ペットの状況をお知らせいただければ、必要な準備期間と進め方をご案内します。
書類の作成や各種申請そのものを代行するものではなく、必要な情報整理や手続きの流れのご案内が中心です。入国の可否やフライトの確約、ペットの健康状態を保証するものでもありません。動物病院での処置やワクチン接種、健康管理については、飼い主さまとかかりつけの獣医師にご相談ください。料金は渡航先・時期・ペットの状況により異なるため、お問い合わせの際に概算をお伝えします。
よくある質問(FAQ)
まとめ:最適なルートと正確な手続きでペットも飼い主も安心
日本からイギリスへのペット渡航は、直行便(貨物輸送)かフランス経由(機内同伴や受託手荷物+ユーロトンネル)を選ぶのが一般的な二大ルートです。どちらもイギリス入国要件(マイクロチップと狂犬病ワクチンの順序、犬の駆虫処置など)を満たす必要があり、フランス経由の場合はEU要件も加わって書類管理が二重になります。
ペットへの負担という観点では、貨物室での長時間輸送を避けられるフランス経由ルートが有力な選択肢になり得ますが、書類の手間は増えます。イギリス到着後は、マイクロチップの英国データベースへの再登録や、ペット可物件探し、動物病院・保険といった新生活のセットアップも必要です。渡航先・出発予定時期・ペットの状況をお知らせいただければ、PetAirが必要な準備期間と進め方をご案内します。
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執筆: PetAirJPN 編集部(国際ペット輸送の実務チーム)
※この記事の情報は2026年7月時点のものです。各国の検疫規制・航空会社のポリシーは予告なく変更されることがあります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の渡航可否・要件の確定判断は、各国当局・動物検疫所・航空会社の最新の公式情報を必ずご確認ください。
参考文献:GOV.UK「Bring your pet to Great Britain」/GOV.UK「Great Britain pet health certificate」/GOV.UK「Banned dogs」/LeShuttle公式サイト/農林水産省 動物検疫所