最終更新日:2026年8月7日
EUのペット渡航規則、何が変わったの?
2026年4月22日、EU域内でペットを連れて移動する際の規則が新しくなりました。中心となるのは委任規則(Commission Delegated Regulation (EU) 2026/131)です。実施規則((EU) 2026/705)や国リストに関する規則((EU) 2026/636)もあわせて施行されています。これらが、従来の規則(Regulation (EU) 576/2013)を置き換える形になりました(出典: ドイツ連邦食料農業省公式ページ、確認日2026年7月)。対象は犬・猫・フェレットで、EU加盟国に共通する基本規則として適用されます。
マイクロチップの装着、狂犬病ワクチンの接種、動物衛生証明書といった、飼い主が個別に用意する書類・要件そのものは、これまでと大きくは変わっていません。一方でEU側は、違法な取引を防ぐための管理強化とトレーサビリティ向上を今回の改正の狙いとして掲げています(出典: ドイツ連邦食料農業省公式ページ、確認日2026年7月)。この記事では、飼い主として実務上何を確認すべきかを中心にお伝えします。
先に押さえたい基本3点
- 2026年4月22日から新しい規則が施行済み。マイクロチップ・狂犬病ワクチン・動物衛生証明書など、飼い主が用意する書類・要件そのものは大きくは変わっていません
- 狂犬病ワクチンはマイクロチップ装着と同日以降に接種する必要があります。マイクロチップより前にワクチンを接種していると、そのワクチン接種が入国時に無効と判断される可能性があります
- 日本からの渡航では、基本的なケースとして動物衛生証明書の取得が必要です(ペットの渡航歴などにより取り扱いが異なる場合があるため、ご自身のケースに該当するかは本文および公式情報でご確認ください)。渡航先によってはエキノコックス駆虫(犬のみ)も必要になります
マイクロチップとワクチンの「接種順」はなぜ重要?
EUのルールでは、狂犬病ワクチンを接種した日が、マイクロチップを装着した日と同じか、それより後でなければならないと定められています。マイクロチップの装着より前にワクチンを接種していた場合、そのワクチン接種は入国の際に無効と判断される可能性があります(出典: 欧州委員会公式ページ「Bringing your pet into the EU」、確認日2026年7月)。同じ日にマイクロチップ装着とワクチン接種を行った場合は問題ありません。
このルール自体は今回の改正で新しく設けられたものではなく、従来の規則から引き継がれているものです。日本では動物病院によって接種する順番が前後することがあるため、渡航を予定している方は、愛犬・愛猫の接種履歴を一度確認しておくと安心です。なお、2011年7月3日より前に入れられた入れ墨も、識別可能な状態であることなど一定の条件を満たせば、マイクロチップに代わる識別手段として認められる場合があります。該当するかどうかは、証明書を発行する獣医師または欧州委員会の公式ページであらかじめご確認ください。
日本からEUへ入国する際、どんな書類が必要?
日本を含む非EU国からペットを連れてEUへ入国する場合、基本的なケースでは動物衛生証明書(Official Animal Health Certificate)の取得が必要です。ただし必要となる書類はペットの渡航歴などの状況によって異なる場合があるため、ご自身のケースで何が必要かは依頼先の獣医師、または欧州委員会の公式ページで事前にご確認ください。証明書が必要な場合、次の内容が記載されます(出典: 欧州委員会公式ページ、確認日2026年7月)。
これとは別に、今回の移動が非商業目的であることを示す宣言書の用意・携行も必要です。動物衛生証明書とは別の書式のため、誰が作成・準備する書類かも含めて、欧州委員会の公式ページや依頼先の獣医師にあらかじめ確認しておきましょう。
証明書には有効期間が定められていますが、具体的な日数は渡航のタイミングや状況によって確認が必要になるため、この記事では明記していません。証明書を発行してもらう獣医師、または欧州委員会の公式ページで最新の要件をご確認ください。
エキノコックス駆虫が必要な国はどこ?(犬のみ)
犬に限り、フィンランド・アイルランド・マルタ・ノルウェー・北アイルランドへ入国する場合は、エキノコックス(多包条虫)の駆虫処置が必要です。猫・フェレットにはこの要件はありません(出典: 欧州委員会公式ページ、確認日2026年7月)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象国・地域 | フィンランド、アイルランド、マルタ、ノルウェー、北アイルランド |
| 対象動物 | 犬のみ(猫・フェレットは対象外) |
| 処置のタイミング | 入国の24〜120時間前(1〜5日前) |
| 実施者 | 認定獣医師が実施し、記録を残す |
出典: 欧州委員会公式ページ「Bringing your pet into the EU」、確認日2026年7月。対象国・地域はこの記事の時点のものです。渡航前には必ず同ページで最新の対象地域と要件をご確認ください。
狂犬病の抗体価検査は必要?
必要かどうかは、渡航元の国がEUの指定リスト(Annex I・II、Implementing Regulation (EU) 2026/636)に掲載されているかで変わります。指定リストに掲載されていない国からの渡航では、狂犬病抗体価検査が必要です。基準は抗体価0.5 IU/ml以上で、初回のワクチン接種(プライマリー接種)を受けた個体については、採血をその接種から30日以上経過し、かつ動物衛生証明書の発行日の90日以上前に行う必要があるとされています。すでに有効なワクチン接種を継続している場合は取り扱いが異なることがあるため、ご自身のペットがどちらに該当し、いつ採血すればよいかは、事前に欧州委員会の公式ページまたは検査を依頼する獣医師にご確認ください(出典: 欧州委員会公式ページ、確認日2026年7月)。検査を行う機関の指定要件など、その他の詳細条件も同ページで確認できます。
この指定リストの内容は、対象国の見直しにより更新されることがあります。日本からの渡航における抗体価検査の要否は、渡航前に必ず欧州委員会の国リストページで最新の掲載状況をご確認ください。
将来的に予定されている変更はある?
この記事で解説した渡航ルールも、国リストなど一部の規則は今後見直し・改正が行われることがあります。最新の内容は欧州委員会の公式ページで随時ご確認ください。これとは別に、犬・猫の「福祉とトレーサビリティ」に関する規則があり、その中には渡航前にデジタル登録を行う仕組みなどが盛り込まれています。こちらは今回(2026年4月22日施行)の渡航規則とは別の立法プロセスです。
この規則は、欧州議会が2026年4月28日の本会議で、欧州理事会が2026年5月22日に、それぞれ正式に採択済みです(出典: 欧州議会 Legislative Train Schedule、確認日2026年7月)。今後は官報への掲載を経て発効し、実際の適用開始は多くの条項で2028年頃になる見込みです。今すぐ対応が必要というものではありませんが、今後の適用時期は欧州委員会・欧州議会の公式発表でご確認ください。
出発までにやっておきたい準備は?
渡航先の要件に加えて、日本側の輸出手続きも並行して進める必要があります。次の順序で準備を進めましょう。
早めに動物病院へ相談
マイクロチップとワクチンの接種順を確認し、必要であれば追加の対応を相談します。
該当する場合はエキノコックス駆虫の予定を組む
対象国へ渡航する犬は、入国の24〜120時間前に認定獣医師による駆虫処置が必要です。
動物衛生証明書の発行を依頼
獣医師に個体識別情報・ワクチン証明などを記載してもらいます。証明書の発行手続きは獣医師への依頼だけで完了しない場合があるため、必要な手続きや発行機関を依頼先の獣医師または欧州委員会の公式ページで確認しておきましょう。非商業目的の宣言書は証明書とは別の書式のため、誰が準備する書類かも含めて公式ページでご確認ください。余裕を持って依頼しましょう。
検査希望日の14日前まで:日本側の輸出検査を申請
動物検疫所へNACCS(動物検疫関連業務をオンラインで行うシステム)で申請し、検査時間を予約します(出典: 動物検疫所、確認日2026年7月)。
出発10日以内:輸出検査を受ける
動物検疫所で輸出検査を受け、輸出検疫証明書の交付を受けます(出典: 動物検疫所、確認日2026年7月)。
出発当日:チェックイン
動物衛生証明書や輸出検疫証明書など書類一式を提出します。提出先やタイミングは輸送方法(受託手荷物・貨物便など)や利用する航空会社によって異なるため、事前に航空会社の案内で確認しておきましょう。
よくある失敗・注意点は?
準備を進める際のチェックリスト
よくある質問(FAQ)
まとめ
2026年4月22日に施行されたEUのペット渡航規則は、飼い主が用意する書類・要件そのものが大きく変わったわけではなく、複数の規則をEU加盟国共通のルールとして整理し直したものです。一方でEU側は、違法な取引を防ぐための管理強化とトレーサビリティ向上をこの改正の狙いとして掲げています。だからこそ、マイクロチップとワクチンの接種順、動物衛生証明書の内容、渡航先ごとのエキノコックス駆虫や抗体価検査の要否といった一つひとつの確認を、早めに済ませておくことが安心につながります。
狂犬病ワクチンの基礎知識をより詳しく知りたい方はワクチン解説記事もあわせてご覧ください。
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執筆: PetAirJPN 編集部(国際ペット輸送の実務チーム)
※この記事の情報は2026年8月時点のものです。各国の検疫規制・航空会社のポリシーは予告なく変更されることがあります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の渡航可否・要件の確定判断は、各国当局・動物検疫所・航空会社の最新の公式情報を必ずご確認ください。